——漢方専門相談薬局 店主インタビュー
最初にこう聞いた。「どうして体質改善には時間がかかってしまうのですか?」
少し間があって、こう言った。「それだけ心身ともに頑張ってこられた方が多いのですよね」
時間がかかることは、一生懸命生きてきた証
血液や骨など、体の細胞が入れ替わるには、ある程度の時間がかかる。漢方医学では昔から、3ヶ月をひと区切りとして体を見てきた。季節が移ろうように、体質も一気には変わらない。
今まで良かれと思ってやってきた生活習慣や考え方が、体質に合っていなかった。その積み重ねが、今のお体の状態につながっている。そして——
「それだけ一人で頑張ってこなければいけなかったのでしょうね。」
時間がかかるということは、それだけ無理をしてきたということ。
でもその無理を否定することは、その人の過去や人生を否定することになる。
だから「時間がかかる」という事実を、「それだけ一生懸命生きてきた証」として伝えたい——そう話す声は、静かだが重みがあった。
紫雲では、問診と気功による体質分析をもとに、その方に合わせた煎じ薬を処方している。
体質を整えるには時間がかかる。
だからこそ、この「最初の一言」を大切にしているのだと感じた。
「良い日が1日増えた」を、喜べるようになるまで
改善していく中で、どんな時期を経るのだろうか。
改善の過程には、大きく3つの時期があると言う。
まず最初は、とにかく悪い状態が続く時期。体が変わりはじめるまで、しばらくはその状態が続く。
それを超えると、「良い日・悪い日」の波がある時期に入る。
「この波があること自体、とても自然なことです。今まで1週間のうち7日間ずっと悪かったのが、良い日が1日、2日と増えてきた——そう考えると、変化が見えやすくなります。」
その言葉を聞いて、ふと思った。「良い日が1日増えた」ことを喜べるようになるまで、どれほどの時間を、患者さんたちはひとりで耐えてきたのだろう、と。
波がある時期に「やっぱり良くなっていないんじゃないか」と不安になる方も多い。
そのとき、ただ「大丈夫ですよ」とは言わない。
氣功により身体の状態を東洋医学的に分析したうえで、
「今はこの段階だから、もう少し時間がかかります」
「ぶり返したわけではなく、一時的に症状が出ているだけです」
と、根拠を持って伝える。
不安を感情で受け止めるのではなく、状態を分析して言葉にする——それが、続ける力になる。
さらにその先には、3つ目の時期がやってくる。
良い日が増えるだけでなく、悪い日の「質」も変わってくる。
「前みたいに真っ暗ではない」「戻っても立ち直りが早くなった」と感じられるようになる時期だ。
「患者さんご自身は、うまく言葉にできないけれど、なんとなく変わってきた気がする——とおっしゃることが多いです。その”なんとなく”を、大切にしてほしいと思っています。」
「力を抜いていい場面がある」と気づくこと
体質改善には漢方薬と生活習慣・食習慣、両方が関係してくる。
漢方薬も食品も同じ仲間だと言う。体に合っている食品を摂ればどんどん元気になるように、体質に合った漢方薬が力を発揮する。逆に言えば、何を取り入れるかが、それだけ体に直結している。
それから、もうひとつ。話しながら、どこか遠くを見るような目をしていた。
「物事すべてに真面目に向き合う方は、どうしても体に力が入り続けます。本当に大切な場面で集中するのは大事なこと。でも、そうでない場面にも同じだけ力を入れて考えてしまうと、自律神経のバランスが少しずつ崩れていきます。」
ご自身の体と向き合うようになった患者さんは、「ああ、自分はここで頑張りすぎていたんだ」という気づきが出てくることが多い——そう言って、少し表情が和らいだ。
その気づきが、漢方の効き目を後押しする。
▶ 長く通って変わっていく方に共通することについては、こちらでお話しています。
「あきらめたくない」が残っているなら
——どんな方に来てほしいですか?
また、少し間があった。
「大げさかもしれませんが——ご自身の残りの人生を、充実したものにするために真剣に取り組んでくださる方に来ていただけると嬉しいです。今は苦しいかもしれません。でも、同じ熱量で一緒に取り組んでいただけると幸いです。」
正直なことも、静かに続けた。
「漢方薬を飲むだけになってしまったり、決められた量を続けることが難しい場合は、十分なお力になることが難しいと感じています。」
正直に言い切った後、表情が少し柔らかくなった。
——長く向き合ってきた患者さんが変わっていくのを見るとき、何を感じますか?
最後の問いに微笑み、こう答えた。
「苦しい症状から解放され、辛い状態を脱け出して、ご自身の人生を本当の意味で歩み出した患者さんを見るとき——何事にも代えがたい喜びがあります。」
もし今、「何をしても良くならない」と感じていても、どこかに「あきらめたくない」という気持ちが残っているなら——その気持ちを、どうか手放さないでほしい。
