「早く寝た方がいいのはわかってる。でも、子どものことが一段落したら24時で、お風呂に入ってスマホを見ていたら気づけば1時を回っていた」
そういう話を、相談にいらっしゃる方からよく聞きます。
睡眠の大切さは誰でも知っています。
でも、”23時就寝”はどこか理想論のように感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、「何時間寝るか」よりも「いつ寝るか」が体調に影響する理由を、東洋医学の考え方と現代の体内時計の視点からお伝えしたいと思います。
完璧な生活を目指すのではなく、「今より少しだけ前倒しする」という小さな一歩を提案する内容です。
昼と夜には、それぞれの”役割”がある
東洋医学では、自然界のすべての現象を「陰」と「陽」という二つの性質でとらえます。
昼間は陽の気が外側で活動し、仕事・家事・育児などに向けてエネルギーを発揮する時間です。
そして日が沈み、夜になると今度は陰の気が内側に向かい、一日で使い疲れた体を深いところから養う時間に切り替わります。
この切り替えは、夜中に突然起こるわけではありません。
日が暮れるとともに少しずつ体は”休む準備”に入り始め、深夜0時前後にその深度がいちばん高まると考えられています。
「23時までに布団に入る」というのは、体が最も回復しやすい”陰の時間”に、しっかりと眠りの中に入っておくということです。
陽の活動だけを延々と続けて夜更かしするのは、畑を昼も夜も休みなく耕し続けるようなもの。
土が回復する時間がなければ、やがて作物は育たなくなります。
「何時間寝たか」より「いつ寝たか」
よく「私は6時間寝れば大丈夫」とおっしゃる方がいます。
ただ、同じ6時間でも、「23時〜5時」と「2時〜8時」では、翌日の体の感覚がかなり違う、という経験をされた方も多いのではないでしょうか。
これは感覚の問題ではなく、体の仕組みによるものです。
人の体には体内時計が備わっており、光や温度の変化に合わせて自律神経・ホルモン・免疫など、あらゆる機能のリズムを調整しています。
深夜0時をまたいで眠ることで、成長ホルモンの分泌や自律神経の切り替えがうまく機能しやすくなることがわかっています。
細かい仕組みは覚えなくて大丈夫です。
「日付が変わる前後にぐっすり眠る」これが合言葉です。
夜更かしが続くと出やすい不調
「検査をしたけれど異常はないと言われた。でも毎日しんどい」
漢方の相談窓口には、そういった方がよく来られます。
話を聞くと、就寝時間が日付をまたぐのが当たり前になっていることが多いです。
睡眠の”時間帯”が後ろにずれていると、体にはじわじわとさまざまなサインが出てきます。
- 朝、起きても頭がぼんやりして午前中にエンジンがかからない
- 肩こり、頭の重さ、なんとなくのめまい
- 気分の浮き沈みが激しくなる、涙もろくなる、イライラしやすい
- 生理周期が乱れる、PMSがきつくなる、冷えやむくみが抜けない
- 夜中に何度も目が覚める、眠りが浅くて夢が多い
これらは単なる「疲れ」や「年齢のせい」ではなく、体が「回復できていない」というサインであることがあります。
特に女性ホルモンのリズムは睡眠の質と深く関わっており、遅い就寝が続くとPMSや月経不順に影響することも少なくありません。
実際に、当薬局にも「ずっと夜1時〜2時就寝が当たり前だった」という方がよくいらっしゃいます。
40代のある女性は、朝のだるさとPMSのつらさから、毎月のように鎮痛剤に頼っていました。
いきなり23時就寝は難しかったので、「まずは24時を目標に」「次に23時30分」と、2〜3週間ごとに10〜15分ずつ前倒ししていきました。
漢方で体質を整えながら3〜4か月ほどかけて就寝時間が23時台に落ち着いてくると、
「朝起きたときの体の重さが違う」「生理前のイライラや頭痛が軽い」と、少しずつ変化を実感されるようになりました。
劇的な“1日での変化”ではありませんが、「寝る時間帯を整えること」が、結果としてPMSやメンタルの揺れを小さくする土台になっていくケースは少なくありません。
「23時就寝」に少しずつ近づくための工夫
いきなり「今日から23時に寝る」は、多くの方にとってハードルが高すぎます。
まずは「今より10〜15分早く寝てみる」だけで十分です。
体が寝る準備に入るためには、少しずつ環境を整えることが助けになります。
- 寝る1時間前からスマホの画面を遠ざける
スマホの光は脳を「まだ昼だ」と勘違いさせ、眠気を遠ざけます。「見ないように」ではなく「手の届かない場所に置いておく」という工夫が現実的です。 - 照明を少し落とす
煌々とした白い光より、少し暖色で暗めの照明にするだけで、体が「夜モード」に切り替わりやすくなります。 - ぬるめのお湯にゆっくりつかる
熱すぎるお風呂は交感神経を刺激してしまいます。
38〜40度程度のお湯に15〜20分、これが体を芯から温めつつ、副交感神経を優位にして眠りを呼び込みます。
完璧にできなくても大丈夫。
「今日は1時になってしまった」という日があっても、「次の日は少し早めにしよう」と調整する意識が続けば、それが養生です。
「23時就寝」は目標ではなく、体への”提案”です
「23時に寝なければいけない」というルールはありません。
これは体がいちばん喜びやすい目安、つまり体への提案です。
仕事の都合や夜型の体質の方もいます。
それでも「今より30分早く」「週に3日は日付が変わる前に」という形で少しずつ前倒ししていくだけで、体調の変化を感じる方は思いのほか多くいます。
「眠れない」「途中で目が覚めてしまう」「睡眠薬をできれば減らしたい」といったお悩みの場合は、睡眠の習慣を整えながら、体質に合わせた漢方でサポートできることもあります。
冷えやのぼせ、気の巡りの乱れ、消化機能の低下など、眠れない背景にある体質のアンバランスを整えていくアプローチです。
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