PMS・PMDDで毎月つらい方へ|漢方で考える生理前の心とからだ

生理前になると、イライラや落ち込みがひどくなって、自分でもコントロールできない。
仕事や家事、人間関係にまで影響して、「これってPMS?それともPMDD?」と不安になっていませんか。
この記事では、PMSとPMDDの違い、なぜ毎月ここまでつらくなるのか、病院でできることと漢方でできることを整理しながら、「生理前の心とからだの不調」を少しずつ軽くしていく道筋をお話しします。

PMS・PMDDとは? ── 毎月つらくなるのは、あなたのせいではありません

「生理の前になると、決まって気分が落ち込んだり、些細なことで涙が出たり、身体がひどく重くなる。」

そんな経験を毎月繰り返しながら、「自分の性格の問題なのかもしれない」「みんなも我慢しているのだから」と、一人で抱え込んでいる方は少なくありません。

でも、それはあなたの性格でも、気の持ちようでもありません。
月経前症候群(PMS)や、その重症型にあたるPMDD(月経前不快気分障害)として、医学的にも説明されている心身の変化です。

PMSとは

PMS(月経前症候群:Premenstrual Syndrome)とは、月経が始まるおよそ2週間前から数日前にかけて、気分の変化・身体の不調などさまざまな症状があらわれ、月経が始まるとともに症状が軽くなっていく状態を指します。

症状の種類や強さは人によって大きく異なります。
イライラや落ち込みといったメンタル面のつらさが中心の方もいれば、頭痛・むくみ・腹痛など身体のつらさが前面に出る方もいます。
「毎月この時期だけ、自分が自分でなくなる感じがする」という表現は、PMSを経験している方からよく聞かれる言葉です。

PMDDとは

PMDD(月経前不快気分障害:Premenstrual Dysphoric Disorder)は、PMSの延長線上にある状態です。
同じく生理前に症状があらわれる点は共通していますが、抑うつ・強い不安・怒り・自己否定感などのメンタル症状が特に強く、仕事・家事・人間関係など日常生活に大きな支障が出るレベルに達しているものを指します。

「生理前の2週間は、仕事でミスが続く」
「夫や子どもにひどい言葉をぶつけてしまい、後から自己嫌悪に陥る」
「消えてしまいたいとさえ思う」
こうした経験をされている方は、PMDDという状態を念頭においたうえで、専門家に相談することをおすすめします。
それほどまでに、ホルモンの変化と心の反応が重なると、こころの余裕が奪われてしまうのです。

▶️PMDDについての詳しい説明はコチラ

「珍しい病気」ではなく、「我慢されやすい不調」

日本では、生理のある女性の70〜80%が何らかのPMS症状を経験しているとも言われています。
けれども「生理だから仕方ない」「毎月のことだから」と受診せずに過ごしている方が非常に多いのが現状です。

PMSやPMDDは、珍しい体質でも、精神的に弱いからでもありません。
ホルモンの変化が、脳や身体にリアルな影響を与えることで起こる状態です。
「気のせい」と片づけられてきた症状に、きちんと名前があり、対処できることがあります。
そのことを、まず知っていただきたいと思います。

PMSとPMDDの違い ── 「どちらか」を自分で決めなくていい

「私はPMSなのか、それともPMDDなのか。」
インターネットで調べているうちに、どちらに当てはまるのか分からなくなってしまった、という方は多いと思います。
まず伝えたいのは、本人がラベルを決める必要はない、ということです。
大切なのは「毎月、生理前にどんなつらさがあるか」を正確に把握することであり、診断名は専門家が判断するものです。
ここでは、「自分の状態を言葉にしやすくする」という目的で、PMSとPMDDのおおまかな違いを整理していきます。

共通点 ── どちらも「生理前に強くなり、生理開始とともに落ち着く」

PMSとPMDDに共通しているのは、症状が排卵後〜月経前の時期に出現し、月経が始まると比較的短期間で和らいでいくという点です。
「生理が来たら、あの苦しさが嘘のように消えた」という経験をお持ちの方は、このパターンに心当たりがあるのではないでしょうか。

この周期性こそが、PMSおよびPMDDの大きな特徴です。

PMSの特徴 ── つらいけれど、何とか生活はできている

PMSでは、以下のような症状が生理前に強くなります。

イライラしやすくなる、気分が沈む、涙もろくなる、集中力が落ちる、頭痛、肩こり、むくみ、胸の張り、腹痛、眠気、食欲の変化など、症状の種類はじつに多岐にわたります

ただ、PMSの場合は「とてもつらいけれど、何とか仕事や家事はこなせている」というレベルであることが多いです。
「生理前は調子が悪いけど、来たら戻る」と自覚しながらも、受診するほどではないと感じて過ごしている方も少なくありません。

PMDDの特徴 ── 日常生活に大きな支障が出るレベル

PMDDでは、PMSと症状の種類は重なる部分もありますが、特にメンタル面の症状が強く、日常生活への影響が大きい点が異なります。

強い抑うつ感、激しい怒り・感情の爆発、強い不安や緊張、自己嫌悪・自分を責める気持ち、「消えてしまいたい」という感覚──それほどまでに追い詰められる方もいます。
こうした症状が、毎月のように繰り返されるのがPMDDのつらさです。
仕事でのパフォーマンスが著しく落ちる、家族や職場の人間関係が壊れそうになる、外出できなくなるなど、生活の質が大きく損なわれる状態です。

「うつ病に似ている」と感じることもありますが、PMDDは月経周期と連動して起こる点が特徴です。
周期を記録してみると、「やはり毎月この時期だけ」と気づくケースも多くあります。

「どちらか」より「どのくらいつらいか」が大事

PMSとPMDDの境界線は、症状の「種類」よりも「日常生活への影響の大きさ」で判断されます。
そしてその判断は、婦人科・心療内科などの専門家が診察のなかで行うものです。

自分でラベルを決めようとして、情報に振り回される必要はありません。
「生理前がつらい」「毎月同じ時期に限界になる」という実感があれば、それだけで相談する十分な理由になります。

よくあるPMS・PMDDの症状 ── 心と体に、どんなサインが出るのか

「生理前のイライラ」という言葉はよく聞くけれど、自分の症状がPMSやPMDDに当てはまるのかどうか分からない。
そう感じている方もいるかもしれません。
PMS・PMDDの症状は、メンタル面・身体面ともに非常に幅広く、「こんなことまで関係しているの?」と驚かれることも少なくありません
ここでは、よく見られる症状を整理します。
当てはまるものがあっても、なくても、あくまで「自分を知るための参考」として読んでいただければと思います。

こころのサイン

メンタル面では、以下のような症状が生理前に強くなることがあります。

理由もなくイライラする、些細なことで怒りが爆発する、気分が沈んで何もやる気が起きない、急に涙が出る・泣き止まらない。
不安や緊張が強くなる、自分を責める気持ちが止まらない、集中力や判断力が落ちる、人と会うのが億劫になる、「消えてしまいたい」「誰とも話したくない」という感覚が出る──。

それほどまでに、ホルモンの変化とストレスが重なると、こころの余裕が奪われてしまうことがあります。
「この時期の自分は、本当の自分じゃない気がする」という言葉を、相談の場でよく耳にします。
それほど、ふだんとは別人のように感じるほどの変化が起きることがあります。

からだのサイン

身体面でも、さまざまな症状があらわれます。

頭痛・偏頭痛、肩こりや首のこわばり、胸の張りや痛み、お腹の張り・腹痛、下痢や便秘・ガスが出やすい、全身のむくみ(特に手足や顔)、肌荒れ・ニキビが出やすくなる、強い眠気・逆に眠れない、食欲が急に増す・甘いものやしょっぱいものが無性に食べたくなる、疲れがとれない・だるさが続く──。

身体の症状は「婦人科とは関係ない」と思われがちですが、ホルモンの変化は全身に影響します
「生理前になると決まって頭痛がひどくなる」「お腹の調子が崩れる」という方も、PMSと関連している可能性があります。
特に、お腹の張りや下痢・便秘が目立つ方については、別の項目で詳しくお話しします。

「メンタル中心」「身体中心」「両方」── パターンは人それぞれ

PMSの症状は、全員が同じかたちで出るわけではありません。
メンタルの症状がほとんどで身体はそれほどでもない方、逆に身体はつらいが気分の変動はあまりない方、メンタルと身体の両方が同時に強く出る方など、パターンは人によって大きく異なります

例えば、「普段は穏やかなのに、生理前だけ家族にきつく当たってしまう」「仕事中に急に涙が止まらなくなり、自分でも驚いた」といった相談を受けることがあります。
こうした変化も、性格の問題ではなく、ホルモン変化にからだが反応しているサインのひとつです。

また、年齢やライフステージ、そのときの睡眠・ストレスの状態によっても、毎月少しずつ症状の出方が変わることがあります。
「先月と今月で違う」ということも、珍しくありません。

「こんな症状もあるのか」と、自分の身体への理解を少し広げるような気持ちで読んでいただけたら、と思います。
自分を責める材料にする必要は、まったくありません。

なぜ毎月ここまでつらくなるのか ── ホルモン・ストレス・体質の重なり

「生理前になるたびに、どうしてこんなに苦しくなるんだろう。」
毎月繰り返されるつらさの前に、そう感じている方は多いと思います。
原因が分からないままだと、「やっぱり自分の性格の問題なのかも」と思ってしまいがちです。
でも、PMSやPMDDには、からだの中で起きているいくつかのメカニズムが関わっていることが分かっています。
それを知るだけで、自分を責める気持ちが少し和らぐことがあります。

ホルモンの変動が、脳にも影響する

月経周期の後半(排卵後〜月経前)には、黄体ホルモン(プロゲステロン)が増加し、その後急激に低下します。
この変動が、脳内の神経伝達物質──特にセロトニンの働きに影響を与えることが分かっています。

セロトニンは、気分の安定・感情のコントロール・睡眠・食欲などに深く関わる物質です。
生理前にセロトニンの働きが低下しやすくなることで、イライラ・落ち込み・不安・過食・不眠といった症状があらわれやすくなります。

「ホルモンのせい」というと他人事のように聞こえるかもしれませんが、これはからだの中で毎月起きている、リアルな変化です。
気持ちの持ちようではどうにもならない部分が、確かにあります。

ストレス・睡眠・栄養が重なると、症状が強く出やすい

ホルモンの変動だけがPMSの原因ではありません。
仕事や人間関係のストレス、睡眠不足、栄養の偏り、運動不足などが重なることで、症状がより強く出やすくなることも分かってきています。

「繁忙期の生理前は特にひどい」「寝不足が続いていると、メンタルの波が大きくなる」という実感をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ホルモンの変動という土台の上に、生活の負荷が積み重なったとき、からだと心が限界を超えやすくなります。

「ホルモンが悪い」のではなく、「反応の仕方」に個人差がある

同じような月経周期を持っていても、PMSの症状がほとんど出ない方もいれば、毎月大きくつらくなる方もいます。
この違いは、ホルモンの変化に対するからだの反応の仕方──つまり体質──に、個人差があるからです。

ホルモンそのものが「異常」なのではなく、ホルモンの変動をからだがどう受け取るか、どう処理するかに違いがあります。
だからこそ、「体質を整える」というアプローチが意味を持ちます。
睡眠・食事・ストレスとの付き合い方を見直すことや、漢方的なアプローチで体質そのものに働きかけることが、症状の軽減につながる可能性があるのは、このためです。

「なぜ私だけこんなにつらいのか」ではなく、「私のからだはこういう反応をしやすいのだ」と、少し視点を変えて自分をみてあげることができると、対処の入り口が見えやすくなります。

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PMS・PMDDを漢方ではどう見るか ── 「PMSだからこの薬」ではなく「あなたの体質から」

病院でPMSと診断されても、「結局、自分にとって何が合っているのか分からない」と感じている方がいます。
また、「薬を飲む前に、まず体質から整えてみたい」と考えて漢方に関心を持つ方も少なくありません。
漢方がPMS・PMDDに対してどういうアプローチをとるのか、ここで整理します。

漢方は「病名」ではなく「その人の状態」を見る

西洋医学では、症状や検査結果をもとに「PMSである」「PMDDである」と診断し、その診断名に対して治療を行います。
一方、漢方では「PMSだからこの処方」という一対一の対応はありません
同じ「生理前のイライラ」であっても、その人の体質・体力・冷えの有無・お腹の状態・睡眠・精神的なストレスの受け方など、全体の状態を見たうえで、その人に合った処方を選びます。

これは「病名より体質を重視する」という漢方の根本的な考え方によるものです。
同じ症状でも、体質が違えば使う処方も変わります
逆に言えば、体質に合った処方を選ぶことで、PMSだけでなく、消化器の不調や冷え、疲れやすさなど「その方が日ごろ抱えている他の不調」にもあわせてアプローチしていくことができます。

よく見られる体質パターンの例

PMS・PMDDの相談でよく見られる体質のパターンをいくつか挙げます。
あくまで「こういう見方をする」という参考例ですので、自分で当てはめようとしすぎず、全体の流れを読む感覚でご覧ください。

イライラ・怒りっぽさが目立つ方は、漢方では「気の巡りの滞り」+「血熱」と呼ばれる状態に近いことがあります。
お体の内側に熱がこもり、感情がうまく発散できない状態です。
例として、加味逍遙散(かみしょうようさん)があげられます。

むくみ・だるさ・食欲の乱れ・甘いものへの強い欲求が目立つ方は、消化機能の低下と水分代謝の滞りが関わっていることがあります。
漢方では「脾虚(ひきょ)・水毒(すいどく)」のパターンとして捉えることがあります。

不安・動悸・眠れない・ひどく落ち込むといった症状が強い方は、気のエネルギーが落ちてしまっていると見ることもあります。
精神的な消耗が強く出るタイプで、気力・体力ともに底をつくような感覚を持つ方に多く見られます。

どのパターンが合うかは、実際のご相談のなかで判断します
「自分はどれだろう」と一人で決めようとせず、全体の状態をお話しいただくことが、適切な処方選択への近道です。

生理前だけでなく、ふだんの状態もまるごと見る

漢方相談では、生理前の症状だけを切り取って話すのではなく、ふだんの疲れやすさ・冷え・睡眠の質・お腹の状態・精神的なストレスへの耐性なども含めて、全体として体質を把握します

「生理前だけつらい」と感じていても、実はふだんから気の巡りが滞りやすかったり、消化機能が弱かったりすることが、生理前の症状を強めている背景にあることも少なくありません。
生理前の1〜2週間だけを問題にするのではなく、月全体・からだ全体を整えていく視点を持つことが、漢方的なアプローチの特徴です。

病院での治療と、漢方薬局の役割 ── 対立ではなく、役割分担

「病院に行くべきか、漢方にすべきか。」そう迷っている方もいるかもしれません。
でも、この二つは「どちらか一方を選ぶもの」ではありません。
それぞれに得意なことがあり、役割を分担しながら併用できる場合も多くあります
ここでは、病院での治療と漢方薬局の役割を、できるだけフラットに整理します。

病院(婦人科・心療内科)でできること

PMSやPMDDが疑われる場合、まず婦人科や心療内科を受診することは、とても大切なステップです。
病院では、問診・診察・必要に応じた検査を通じて、他の疾患との鑑別や、症状の程度の評価を行います。
子宮内膜症や甲状腺の異常など、別の疾患が症状の背景にある場合もあるため、医療機関での確認は重要です。

薬物療法としては、主に以下のような選択肢があります。

低用量ピル・LEP製剤は、ホルモンの変動そのものを抑えることで症状を軽減するアプローチです。
抗うつ薬(SSRI)は、脳内のセロトニンの働きを安定させることで、特にメンタル症状の強いPMDDに対して用いられることがあります。
これらはいずれも、一定のエビデンスに基づいた大切な治療の選択肢です。

「薬だけでは整いきらない」と感じる方もいる

一方で、実際の相談の場では、こうした声もよく聞きます。

ピルを飲み始めてから吐き気や頭痛がつらい、気分が沈むような感覚が出てきた。
SSRIを試したが、効いている実感があまりない、あるいは眠気や性欲の低下が気になる。
薬で症状は少し落ち着いたけれど、「根本的に体質が変わった」という感じがしない。
薬を飲み続けることへの抵抗感がある──。

こうした経験は、決して珍しいことではありません。
薬が合う方もいれば、副作用や抵抗感があり、十分な手ごたえが得られない方もいる、というのが現実です。
どちらが正しいということではなく、人によって合うアプローチが異なります。

漢方薬局としての役割

漢方薬局は、病院の診断に取って代わるものではありません。
体質・生活・ストレスとの付き合い方を一緒に整えていくことが、漢方薬局の役割です。

具体的には、症状の出やすい体質そのものに働きかけること、ホルモン変動の影響を受けにくいからだの土台をつくること、睡眠・消化・冷えなどふだんの不調も含めて全体を整えていくこと、などが挙げられます。

「日常生活が送りやすくなること」を共有のゴールに、ご本人の状態に合わせて一緒に考えていきます。
病院で処方されている薬と漢方薬を併用しているケースも多くあります。
気になる方は、相談の際にお薬の内容をお聞かせください。

PMS・PMDDとお腹の不調 ── 下痢・便秘・張りがつらい方へ

「生理前になると、お腹も一緒に崩れる。」
そう感じている方は、実はとても多くいます。
メンタルのつらさとお腹の不調が同じ時期に重なると、心身ともに限界を感じやすく、「生理前の1〜2週間が、毎月どうしても乗り越えられない」という状態になりやすいです。
これは偶然ではなく、からだの中でつながったメカニズムによるものです。

ホルモンの変動は、腸にも影響する

生理前のホルモン変動は、気分や身体だけでなく、腸の動きにも直接影響を与えます
黄体ホルモンには腸の蠕動運動を抑制する作用があるため、生理前は便秘になりやすい方がいます。
一方、生理が近づきプロスタグランジン(子宮を収縮させる物質)が増えてくると、腸にも影響して下痢や腹痛が起きやすくなる方もいます。

さらに、ストレスや自律神経の乱れも腸の動きと深く関わっています。
生理前にメンタルの緊張が高まると、自律神経を通じて腸がより過敏に反応しやすくなります。
これを「脳腸相関」といい、こころとお腹が互いに影響し合うしくみです。
「緊張するとお腹が痛くなる」という経験は、まさにこの脳腸相関のあらわれです。

PMS・PMDDとIBSが重なるとき

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、腸に器質的な異常がないにもかかわらず、腹痛・下痢・便秘・ガスなどの症状が繰り返される状態です。
IBSを抱えている女性の中には、生理前になると特にお腹の症状が悪化するという方が少なくありません。

PMS・PMDDとIBSが重なると、メンタルのつらさとお腹のつらさが同時にピークを迎えます。
仕事中にトイレから離れられない、外出が怖くなる、食事をするのが不安になる──そうした状況が毎月繰り返されることで、生活の質が大きく損なわれることがあります。

「お腹の症状は別の問題」と切り離して考えがちですが、メンタルとお腹のつらさが同じ時期に重なっているなら、そこには共通の背景がある可能性があります

漢方では「こころ・からだ・お腹」をまとめて体質として捉える

漢方では、メンタルの症状・身体の症状・消化器の症状を、それぞれ別々の問題として切り離しません。
イライラや落ち込み、お腹の張りや下痢、疲れやすさや冷えを、すべてその人の体質の一部として全体的に捉えます。

たとえば、気の巡りが滞るタイプの方は、感情がうまく発散できないと同時に、消化機能にも影響が出やすいことがあります。
こころとお腹が同じ根っこでつながっているからこそ、体質に合った処方が決まると、メンタルとお腹の両方に少しずつアプローチしていける場合があります。

生理前のお腹の症状について、さらに詳しく知りたい方は、IBS(過敏性腸症候群)の解説ページもあわせてご覧ください。

漢方相談の流れと、変化のイメージ ── 「いきなり別人」ではなく、少しずつ波が変わる

「漢方を始めたら、どんなふうに変わっていくのだろう。」
そう気になっている方も多いと思います。
漢方による変化は、「ある日を境に症状が完全にゼロになる」というより、毎月の波が、少しずつ形を変えていく
そのイメージを持っていただくと、変化を実感しやすくなります。

初回相談でお聞きすること

初回の相談では、まずじっくりお話を聞くことから始めます
症状の出るタイミングと周期、メンタル・身体・お腹それぞれの状態、仕事や家事の負荷、睡眠の質、食欲や食事の内容、冷えやむくみの有無、ストレスの感じ方や発散の仕方──こうしたことを、できるだけ丁寧に伺います。

「何を話せばいいか分からない」という方も多いですが、思いつくままに話していただければ大丈夫です。
普段の生活の中で感じていることを、そのままお聞かせください。
漢方では、症状の名前よりも「その人がどんな状態で毎月を過ごしているか」の全体像が、処方を決めるうえで大切な情報になります。

「こんなことまで話していいのかな」と感じるようなことも、そうした部分にこそ体質やこころの状態のヒントが隠れていることが多いです。

その後、糸練功という氣功分析法で体質を分析していきます。
一味一味、体質にぴったりと合う薬方を探していきますね。

最初の1〜3か月:小さな変化を見逃さない

漢方を始めて最初の1〜3か月は、「劇的な変化」より「小さな変化」に目を向ける時期です。

たとえば、こんな変化から始まることが多いです。

  • イライラのピークが、以前より少し早く収まるようになった。
  • 落ち込みの波の底が、少し浅くなった気がする。
  • 生理前の眠りが、少しだけ楽になった。
  • お腹の張りや下痢が、前の月より軽かった。

「まだつらいけれど、先月よりはましだった」──この感覚が、変化のはじまりです。

その先:「波をなくす」ではなく「波と付き合える自分になる」

漢方を続けていくと、多くの方が「波はまだあるけれど、以前ほど飲み込まれなくなった」という感覚を持つようになります。
イライラや落ち込みが来ても、「あ、またこの時期か」と少し距離を置いて見られるようになるのです。
生理前でも、仕事や家事をある程度こなせる日が増えてくる。
そんな変化です。

波をゼロにすることが目標ではなく、自分でコントロールできる感覚を取り戻すことが、漢方的なアプローチのゴールに近いものです。

また、体質を整えることは、将来の更年期に向けた土台づくりにもつながります。
PMSや PMDDの症状の背景にある体質の乱れは、更年期障害の症状の出やすさとも無関係ではありません。
「今の不調を和らげる」と同時に、「10年後・20年後のからだへの備え」にもなる、という視点で漢方と向き合っていただくことができます。

実際のご相談例もご紹介しています

PMSやPMDDは、症状の出方も、つらさの重なり方も人それぞれです。
実際にご相談いただいた方の経過や、紫雲が大切にしている考え方について少しずつ紹介していきます。

症例|PMS・月経困難症は漢方の得意分野です【症例】

よくある質問

PMS・PMDDについて漢方薬局に相談を考えている方から、よく寄せられる質問をまとめました。

PMSなのかPMDDなのか、自分では分かりません。相談してもいいですか?

はい、もちろんです。
「PMSかPMDDか」が分からない状態でのご相談は、まったく問題ありません
むしろ、自分でラベルを決めようとしなくていいのが、相談の場の本来の使い方です。

「生理前になると決まってつらくなる」「毎月同じ時期に限界を感じる」という実感があれば、それだけで十分な相談の理由になります。
診断名は、必要であれば婦人科や心療内科で確認していただきますが、漢方相談では診断名よりもその方の状態や体質の全体像を重視しますので、「まだ病院に行っていない」という段階でも歓迎します。

ピルや心療内科の薬と漢方を一緒に飲んでも大丈夫ですか?

多くの場合、併用は可能です。
実際に、病院で処方されたピルやSSRIを飲みながら、漢方薬も併用されている方は少なくありません

ただし、飲み合わせについては処方の内容によって個別に確認が必要なため、相談の際に現在お飲みのお薬をお知らせください。

どのくらいの期間で変化が出ますか?

個人差がありますが、目安としては2〜3周期(約2〜3か月)ほどで、何らかの変化を感じ始める方が多いです
最初の変化は「劇的な改善」ではなく、「イライラのピークが少し早く収まった」「落ち込みの底が少し浅くなった」といった小さなものであることが多いです。

症状の出やすさや体質の状態によって、変化のペースは人それぞれ異なります。
変化が感じにくい場合は、処方の見直しや生活面のアドバイスを加えながら、一緒に方向性を調整していきます。
焦らず、毎月の状態を丁寧に見ていくことが、長く付き合うコツです。

生理が終わったら症状がなくなるので、生理中・生理後は関係ないですか? 更年期とも関係しますか?

生理が始まれば症状が落ち着くのはPMS・PMDDの特徴のひとつですが、「生理後は何も問題ない」かというと、そうとも言い切れません
漢方的には、生理前に症状が強く出やすい体質は、月全体を通じたからだのバランスの乱れとして捉えます。
生理後の疲労感の強さ、排卵期のだるさや気分の変化なども、体質と関係していることがあります。

また、PMSやPMDDの症状の出やすさと、更年期症状の出やすさには、体質的な共通点があると考えられています。
今の体質を整えておくことは、10年後・20年後の更年期を迎えるための土台づくりにもなります
「まだ若いから更年期は関係ない」と思わず、今から少しずつ体質に向き合うことに意味があります。

ご相談を考えている方へ

毎月、生理前になるたびに「またこの時期が来た」と身構えてしまう。
イライラや落ち込みが来るたびに、「自分はおかしいのかもしれない」と感じてしまう。
家族や職場の人には、なかなか理解してもらえない。

そんな思いを抱えながら、一人で何年も過ごしてきた方が、相談の場には多くいらっしゃいます。

毎月決まってつらくなるのは、あなたの性格でも、意志の弱さでも、気の持ちようでもありません。
からだの中で起きているリアルな変化が、心と身体にあらわれているだけです。
それを、もう少し楽に乗り越えられるようになることを、一緒に目指していきたいと思っています。

症状の重さは関係ありません。
「PMDDというほど重くないかもしれないけれど、毎月しんどい」という方も、「病院には行ったけれど、まだ整いきらない部分がある」という方も、「漢方が自分に合うかどうか分からないけれど、一度話を聞いてみたい」という方も、気になっている時点で、相談していただいて構いません

当薬局では、対面でのご相談と、オンラインでのご相談に対応しています。
遠方の方や、外出が難しい時期の方にも、できるだけ敷居を低く、話しやすい形でお応えしたいと考えています。
詳しい流れや料金については、「漢方相談のご案内」のページにまとめています。

相談の前に「こんなことを話してもいいのかな」と迷うことがあれば、まずはLINEで症状を簡単に教えていただくだけでも構いません。
これまでどこに相談しても十分な手ごたえが得られなかった方も、遠慮なくお話しください。

「もう少し頑張ればいい」と、一人で抱え込まないでください。
話を聞かせていただくことから、始めましょう。

この記事の著者・監修

漢方薬・紫雲 代表薬剤師 Kampo Shiun

  • 薬剤師(国家資格)
  • 漢方専門歴 20年以上
  • 気功実践歴 20年以上
  • 開局15年(2010年〜)
  • 漢方薬・紫雲 代表
  • 全国オンライン対応

神奈川県湘南エリアで漢方薬局「漢方薬・紫雲」を開局。 薬剤師として西洋薬の知識を持ちながら、20年以上にわたり漢方・気功の専門家として 多くの患者さまの体質改善に携わってきました。 「どこに行っても改善しなかった」「病院で異常なし、でもつらい」という方のご相談を 特に大切にしています。煎じ薬・氣功チェックを組み合わせた、紫雲ならではのアプローチで根本からの体質改善を目指します。

※ 本記事は薬剤師・漢方専門家の監修のもと作成しています。個別の症状についてはご相談ください。