頭がボーッとしてきて、胸の辺りがザワザワしてくる。
気がつくと、なぜか冷蔵庫の前に立っている。
お腹が空いているわけじゃない。
でも、何かを口に入れないと、この張り詰めた感覚が収まらない。
仕事中は頭の中にモヤがかかったようで、集中できない。
会議で自分が何を話したか、あとから思い出せないこともある。
夜は疲れているのに、眠りが浅くて、ときどき悪い夢を見て目が覚める。
喉のあたりに、何かが引っかかっている感じもする。
つばを飲み込んでも取れない。
耳鼻科で診てもらっても「異常なし」と言われた。
このような症状にお心当たりがある方がいるかもしれません。
心療内科に通った時期もある。
でも今回は、なんとか薬に頼らずに乗り越えたい。
あるいは、漢方というものが自分に合うのかどうか、試してみたい。
そんな気持ちで、このページを読んでくださっているのではないでしょうか。
今回は、そのような状態から回復された40代女性の方の経過をご紹介します。
同じような悩みを抱えている方に、少しでも参考になれば幸いです。
自律神経失調症の再発を5回繰り返した40代女性が漢方相談に来られた理由
ご相談にいらしたのは、40代の女性の方です。
20代から30代にかけて心療内科に通院されていた時期があり、今回で同じような状態になるのは5回目とのことでした。
主なお悩みは、頭の中のモヤモヤ感、過食(ストレスが溜まると食べることで発散してしまう)、悪夢、集中力の低下、仕事後の強い疲労感と無気力、そして喉の違和感でした。
ふだんは物事をある程度流せる、おおらかな方です。
ただ、状態が悪くなってくると完璧主義が強まり、思い詰めてしまうという傾向があるとおっしゃっていました。
「自分でも、悪くなっているときの自分は別人みたいだとわかっている。でもコントロールできない」と。
何度も繰り返してきたからこそ、今回はできるだけ早く、そして根本から整えたいというお気持ちで来てくださいました。
自律神経の乱れで過食が止まらなくなる理由|漢方で見る気と血のバランス
漢方では、心と体を切り離して考えません。
感情の乱れは、気・血・水のバランスの乱れとして体に現れると考えます。
この方の場合、血虚(けっきょ)という状態が根底にありました。
血虚とは、血が量的にも質的にも不足している状態で、「栄養素が足りない」というよりも、「体の各部位に潤いや栄養が届いていない」というイメージです。
頭に十分な血が届かないと、頭のモヤモヤや集中力の低下として現れます。
眠りが浅く、悪夢を見やすいのも、血虚のサインのひとつです。
さらに、気の上昇(気逆・気滞傾向)も見られました。
気とは、体を動かすエネルギーのようなものです。
本来、気はおだやかに全身を巡るものですが、ストレスや疲労が重なると、気が詰まったり、上へ突き上げるように動いたりします。
気功的な感覚で表現すると、本来は丹田(おへその下あたり)に根ざしているはずのエネルギーが、胸や頭のほうへ浮き上がっている状態です。
頭がぼうっとする、焦燥感がある、喉や胸のあたりに何か詰まったような感じがする、といった症状はここから来ています。
喉の違和感については、漢方では古くから「梅核気(ばいかくき)」と呼ばれる状態として知られています。
梅の種が喉に引っかかったようなあの感覚は、気が滞り、喉のあたりで気と水毒が絡み合うことで生じると考えます。
検査では異常が見つからないことが多いのも、そのためです。
では、過食はなぜ起きるのでしょうか。
気が上昇して頭や胸に集中すると、体は無意識に「重さ」を求めます。
食べることは、気を一時的に下に引き戻す感覚があるため、本能的に食べることで落ち着こうとするのです。
食べること自体が悪いのではなく、体がバランスを取ろうとしているサインでもあります。
漢方服用後に『夕食が作れた』|自律神経失調症と過食からの回復プロセス
漢方の処方は、煎じ薬と粉薬を組み合わせた形でスタートしました。
血を補い、気の巡りを整え、上昇した気を落ち着かせることを目指した内容です。
初期変化(数週間〜1ヶ月)
服用を始めてしばらく経ったころ、「仕事から帰ってきて、夕食を作れるようになりました」とご連絡をいただきました。
一見、些細なことのように聞こえるかもしれません。
でも、無気力が続いていた方にとって、これは本当に大きな変化です。
帰宅してそのままソファに倒れ込んでいた日々から、台所に立てるエネルギーが戻ってきた。
それはつまり、気力の根っこが少しずつ育ってきたということです。
喉の違和感も、この時期に和らいできました。
気の流れが整ってくると、詰まっていた感覚がほぐれていくのを、多くの方が実感されます。
中期(3〜5ヶ月)
生理不順については、数ヶ月続きましたが、4〜5ヶ月かけて整ってきました。
血虚の状態では生理周期が乱れやすく、血が十分に整ってくることで、ホルモンのリズムも戻りやすくなります。
焦らず経過を見守ることが大切な時期でした。
安定期(半年以降)
全体的な状態が上向いてきたのを確認しながら、服用開始から半年で減薬。
さらにその3ヶ月後には1日1回へと量を減らしていきました。
そして最終的に、約1年4ヶ月で卒業されました。
一気に良くなったわけではありません。
でも、一歩一歩、確かに戻ってきたという実感が積み重なっていきました。
なぜ、今回は根本から整えられたのか
この方が今回、以前とは違う形で回復できたポイントをいくつかお伝えします。
糸練功による体質の的確な把握
当薬局では、糸練功(しれんこう)という気功的な分析技術を用いて、体の内側の状態を丁寧に確認しています。
今回のケースでも一般的な「気」の反応だけではスッキリしない感覚を受けました。
似たような症状でも人によって深さや優先順位が異なり、そこを見誤ると処方が合いません。
血虚と気の上昇を組み合わせることによって、ぴったりの漢方薬をお選びできたのだと思います。
表面の症状だけでなく、体質の根っこを把握することが回復への近道です。
煎じ薬という処方の力
煎じ薬は、生薬をお湯で煮出して飲む、漢方の中でもっとも体への浸透がきめ細かい形態です。
市販の漢方や粉薬では対応しきれない複雑な体質にも、煎じ薬は柔軟に対応できます。
段階的に減薬し、体の力を引き出したこと
最初から「いつまでに治す」と決めるのではなく、体の状態を見ながらペースを合わせていきました。
漢方は、体が本来持っている回復力を引き出すものです。
無理に急いでもうまくいかないことがありますが、焦らず続けることで、体は着実に応えてくれます。
自律神経と漢方についての、よくあるご質問
自律神経失調症は漢方でどこまで良くなるのか?
自律神経失調症は「ひとつの病名」ではなく、眠れない・だるい・気分が落ち込む・頭がモヤモヤする・胃腸の調子が悪いなど、心と体の両方にさまざまな不調が重なっている状態です。
漢方では、これらをバラバラの症状としてではなく「気・血・水のバランスの乱れ」として捉え、体質そのものを整えていくことで、症状が出にくい土台づくりをしていきます。
今あるつらさ(不眠・不安・だるさなど)を和らげながら、同じ状態を繰り返さないための「根っこ」にも働きかけていけるのが、漢方の大きな特徴です。
心療内科の薬と漢方は併用できるの?
多くの場合、心療内科のお薬と漢方は併用が可能です。
西洋薬は「今出ている症状を素早く抑える」のが得意で、漢方は「なぜその症状が起きているのかという体質の背景にじわじわ働きかける」のが得意分野です。
ですから、急につらい時期には心療内科のお薬でしっかり支えてもらいながら、漢方で体の土台を整えていくという考え方もできます。
現在のお薬の内容によって注意点が変わりますので、併用を希望される場合は、必ずお薬手帳や処方内容をお持ちのうえでご相談ください。
自律神経失調症やうつ状態を繰り返してしまう方へ|症状と体質は別ものです
「また同じ状態になってしまった」という気持ちは、どれほど重いものか、想像します。
でも、繰り返してしまうことは、意志が弱いわけでも、根性が足りないわけでもありません。
体の中の根っこ、つまり気や血のバランスが、十分に整わないまま再スタートしていた、ということでもあります。
漢方の視点では、「症状が消えること」と「体質が整うこと」は別のことです。
症状だけを抑えると、きっかけがあるたびに同じ状態が戻りやすくなります。
今回この方が約1年4ヶ月かけて丁寧に体を整えたことは、次の繰り返しを防ぐための、大切な時間でもありました。
頭のモヤモヤが続いている、過食がやめられない、喉に何かが引っかかっている感じがする。
そんな状態が続いているとしたら、それはあなたの体が、助けを必要としているサインかもしれません。
「どこに行けばいいかわからない」「また相談して、また違うと言われるのが怖い」。
そんなお気持ちがあっても、大丈夫です。
漢方相談は、診断をつけるものではなく、今の体の状態を丁寧に聞かせていただくところから始まります。
症状を箇条書きにする必要はありません。
「最近こんな感じで」と、LINEで簡単に教えていただくだけで構いません。
何度か同じ状態を繰り返してきた方でも、ぜひ遠慮なくご相談ください。
あなたにも、「夕食を作れた」と思える日が、きっと来ます。
