「メイラックスをやめてから、朝になると不安で胸がつぶれそうになる」
「ベンゾジアゼピン系の離脱症状なのか、それとも自分がおかしくなってしまったのか、わからない」
「検査では何も異常がないと言われた。でも、毎朝が本当につらい」
このページを開いてくださったあなたも、もしかしたらそんな気持ちを抱えているかもしれません。
こんな悩みを持つ方が、よく当薬局にご相談くださいます。
- メイラックスを数週間飲んで、やめたら強い不安感が出てきた
- ベンゾジアゼピン系の離脱症状が怖くて、薬を減らすことができない
- 朝〜午前中が特につらく、夕方になると少し楽になる
- めまい、手の震え、喉のつまり感など、体の症状も重なっている
- 内科や心療内科で検査を受けたけれど、大きな異常は見つからなかった
今回は、そういった状態で当薬局を訪れた30代女性の方の経過を、できるだけ丁寧にご紹介します。
「こういう経過をたどった方もいる」という一例として、少しでも参考にしていただければ幸いです。
朝の強い不安とメイラックス離脱症状に悩んでいた30代女性のケース
ご相談に来られたのは、30代後半の女性の方でした。
5年ほど前、妊娠中にパニック発作が起きたことが、体調の変化のはじまりでした。
その後、時代の流れもあってパンデミックを経験するなかで、漠然とした不安感がさらに強まっていったといいます。
内科的な検査は一通り受けましたが、「特に異常はありません」と言われてしまい、症状の説明がつかない状態が続いていました。
心療内科でメイラックス(成分名:ロフラゼプ酸エチル)を処方され、約3週間服用しました。
メイラックスはベンゾジアゼピン系に分類される抗不安薬のひとつです。
服用を止めたあと、もともとあった不安感とは質の違う、強い恐怖感・不安感が出てきました。
これが、いわゆるメイラックス離脱、あるいはベンゾジアゼピン系薬の離脱症状と呼ばれる状態に近いと考えておられました。
一日の中に、波があった
症状には、はっきりとした時間のリズムがありました。
朝から午前中にかけてが最もつらく、夕方から夜にかけては比較的落ち着いてくる、という流れです。
「朝が来るのが怖い」とおっしゃっていたことが、今も印象に残っています。
身体的な症状も複数重なっていました。
- 背中の上の方の痛みとこわばり
- 手汗・手の震え
- ぐるぐると止まらない思考
- めまい、右側頭部の頭痛、右目の奥の痛み
- 奥歯の噛み締め、喉の違和感
- 食欲不振と、4〜5kgの体重減少
「検査では異常なし」と言われながら、日常生活はこれほどつらい。
そのギャップに、深く疲弊されている様子でした。
メイラックスなどベンゾジアゼピン系離脱症状を漢方ではどう見るのか
漢方では、病名ではなく「今の体の状態」に着目して処方を考えます。
この方の場合、大きく二つのパターンが重なっていると判断しました。
「血虚(けっきょ)」|体を潤すものが足りていない状態
漢方でいう「血(けつ)」とは、西洋医学の血液よりも少し広い概念で、体と心を養い、潤すもののことを指します。
この「血」が不足した状態を「血虚」と呼びます。
血虚になると、心が落ち着く栄養が行き届かなくなり、不安感・ドキドキ感・眠りの浅さ・めまいといった症状が出やすくなります。
この方の状態は、まさにそのパターンに近いものでした。
「気の上昇(きのじょうしょう)」|エネルギーが上半身に偏っている状態
漢方には「気(き)」という概念があります。
体を動かすエネルギーのようなものです。
本来は体の中をバランスよく巡っているはずなのですが、ストレスや緊張が続くと、気が頭や上半身のほうにのぼりすぎてしまうことがあります。
気が上にのぼりすぎると、頭痛・顔まわりの症状・喉の違和感・背中の緊張・ぐるぐる思考などが出やすくなります。
この方の症状
右側頭部の頭痛、目の奥の痛み、喉のつまり感、背中の上部のこわばり
は、このパターンとよく重なっていました。
なお、ベンゾジアゼピン系の離脱症状でお悩みの方にも、似たような体の状態がみられることがあります。
あくまでもこの方の場合という前提ですが、参考までにお伝えします。
メイラックス離脱後の不安感と自律神経の乱れに対する漢方治療の流れ
スタート:血を補いながら、気の流れを整える
最初は、血を補いながら上半身にのぼりすぎた気をゆるめる煎じ薬1種類と、サポートの粉薬2種類からスタートしました。
煎じ薬は生薬を組み合わせて一から煮出すもので、その方の体の状態に合わせて細かく調整できるのが特徴です。
2週間後:朝の空気が、少しだけ変わった
2週間後にご来局いただいたとき、「朝の不安の強さが、ほんの少しだけやわらいできた気がする」とおっしゃっていました。
背中の痛みや手汗も、劇的ではないけれど確かに落ちついてきている、と。
「一日中真っ暗だったのが、少しだけ明るさが戻ってきたような感覚」と表現してくださったことを、よく覚えています。
大きな変化ではないけれど、体が少しずつ応答し始めているサインでした。
2ヶ月後:一時的な波が来たが、それを「波」として見られるようになった
2ヶ月ほど経ったころ、久しぶりに症状が強く出る時期がありました。
ただ、よく聞いてみると、その前に日常生活で大きな負荷がかかる出来事が重なっていたことがわかりました。
「また元に戻ってしまった」と感じるのは自然なことです。
でも、「生活の負荷が重なったときに出やすい、一時的な波なのかもしれない」という視点を持てると、気持ちの受け取り方が少し変わります。
このタイミングで煎じ薬を微調整し、体の変化に合わせた処方に整えました。
6ヶ月後〜8ヶ月後:サポート薬を少しずつ手放していく
6ヶ月を過ぎたころ、サポートの粉薬を半量に減らすことができました。
体が自分で安定を保てる時間が、少しずつ長くなってきていたからです。
8ヶ月後には、そのサポート薬をお休みできる状態になりました。
1年後:首の反応に着目し、処方を見直す
1年が経ったころ、少し落ち着かない様子が出てきたため、体全体を改めてチェックし直しました。
このとき、頸椎(首の骨まわり)の反応に注目しました。
首や肩の緊張は自律神経の働きにも影響することがあり、ここへのアプローチが必要と判断し、その部位をサポートする粉薬を追加しました。
自律神経と首肩の関係は、漢方的な視点でも、また現代医学的な観点からも注目されることがあります。
こわばりや緊張がほぐれてくると、気の流れも落ち着きやすくなります。
1年10ヶ月後:漢方薬を卒業
その後は大きな波が少なくなり、約1年10ヶ月で漢方薬を卒業されました。
「朝が来るのが怖い」とおっしゃっていた方が、少しずつ自分のリズムを取り戻していかれた経過でした。
なぜメイラックス離脱後の朝の不安が少しずつ落ち着いていったのか
この方の経過を振り返ると、大きく二つのことが体に起きていったように思います。
ひとつは、血をゆっくり増やしながら、体と心に潤いを戻していくこと。
心が落ち着くためには、体の内側に十分な養いがある状態が必要です。
煎じ薬でその土台を少しずつ整えていきました。
もうひとつは、上半身にのぼりすぎていた気を、お腹や足元のほうへ少しずつおろしていくこと。
頭や上半身に気が集まりすぎているとき、人は不安や緊張を感じやすく、思考もぐるぐるしやすくなります。
重心を下げるように気の流れを整えることで、朝の不安がやわらいでいきやすくなります。
朝に不安が強くて夕方に落ち着きやすいというリズムは、漢方的には「陽気(体を活動させるエネルギー)の動き」と関係があると考えることがあります。
朝は気が活発に動き出す時間帯で、体の中の不均衡が出やすいともいわれます。
夕方以降は自然と気が落ち着く方向に向かいやすく、楽に感じやすい。
こういった体のリズムに合わせて処方を組み立てることも、漢方の視点からできることのひとつです。
また、1年後に首の反応に着目したことも、経過に影響したと感じています。
首肩の緊張がほぐれることで、自律神経の乱れが少しずつ整いやすくなる。
漢方では、そういったつながりを体全体でみながら処方を調整していきます。
今回ご紹介したのは30代女性のメイラックス離脱後のケースですが、ベンゾジアゼピン系抗不安薬全般の減量・断薬後に不安や身体症状が強くなっている方にも、似たような体の状態がみられることがあります。
もちろん、すべての方が同じパターンというわけではありませんが、「検査で異常がないのに症状が続いている」という状況に、漢方の視点が何か糸口を与えられることがあります。
ベンゾジアゼピン系離脱で悩む方へ|漢方薬局からのメッセージとご相談案内
「メイラックスをやめてから、毎朝が怖くなった」
「ベンゾジアゼピン系を減らしたいけど、どうしていいかわからない」
「30代なのに、こんなに体がしんどいなんておかしいのかな」
「検査では異常なしと言われたけど、日常生活が本当につらい」
そんなふうに感じている方に、まず伝えたいことがあります。
あなたがおかしいのではありません。
体が、今の状態に一生懸命反応しているということです。
漢方は、すぐに劇的に変えるというより、少しずつ体質を整えながら、”あなたのペース”を一緒に探していく方法です。
焦らず、急かさず、体の声に耳を傾けながら進んでいくことを大切にしています。
また、当薬局は無理にお薬をやめることをすすめる場所ではありません。
主治医の先生の方針を大切にしながら、漢方でできるサポートを一緒に考えます。
「薬を減らしたい」「体質から整えたい」「自律神経を漢方でケアしたい」、そういったご希望がある方は、ぜひご相談ください。
