40代・育児と仕事で「休んでもだるい」女性の症例
「体が重だるいのに、病院で調べても何も出てこない」
「お昼の休憩のあと、抗えないくらいの眠気に襲われる」
「週末にしっかり寝たはずなのに、なんだか疲れが抜けていない気がする」
思い当たること、ありませんか。
40代前後で、育児と仕事を両立している女性からは、こうしたお悩みを本当によくうかがいます。
「頑張り屋さんだから」「年齢のせいかな」と、ご自分を納得させながらやり過ごしている方も多いのではないでしょうか。
今日は、当店にご相談にいらしたある女性の症例をもとに、東洋医学の視点でこの「だるさ」や「日中の眠気」がどう説明できるのか、そしてどんなふうに漢方薬を選んでいったのかを、やさしくご紹介したいと思います。
読みながら、ご自身の日々と重なる部分がないか、ちょっと確かめてみてください。
今回ご相談にいらした方について
ご相談にいらしたのは40代の女性でした。
主訴は、体の重だるさと集中しにくさ、そして仕事の休憩後に出る強い眠気。
去年からずっとではないものの、日中を中心にだるさが続いていたそうです。
生活背景をうかがうと、パートナーが単身赴任をしている間、お子様2人の育児と仕事を、ほぼお一人で回してこられたとのことでした。
睡眠時間はだいたい0時〜6時と、極端に短いわけではありません。
今年に入ってパートナーが戻り、昨年に比べれば精神的にも物理的にも負担はかなり軽くなったそうですが、それでもだるさや日中の眠気はすっきりとは解消していなかったそうです。
さらにお話をうかがうと、昔から疲れがたまると頭痛や目の奥の痛みが出やすい体質とのこと。
健康診断や生理周期には大きな異常は見つかっておらず、「検査では何も言われないのに、体はしんどい」という、多くの方が一度は経験する状態でした。
週末に仕事が休みの日でも、重だるさや集中しにくさはあまり変わらなかったそうです。
このような「検査には出てこない不調」の背景には、東洋医学でいう「脾虚(ひきょ)」という体質の偏りが隠れていることが少なくありません。
東洋医学で見る「脾虚」と40代女性のだるさ・疲れやすさ
脾(ひ)は、体のエネルギー工場
東洋医学でいう「脾(ひ)」は、西洋医学の脾臓とは別のものです。
主に胃腸を中心とした消化吸収の働き、そして食べたものからエネルギー(気)を作り出す働きを指します。この「脾」の働きが弱っている状態を「脾虚」と呼びます。
イメージとしては、体という車のエンジンに、十分な燃料がうまく届いていない状態です。
食べたものはきちんと消化しているつもりでも、そこから「気」(体を動かすエネルギー)を効率よく作り出す力が落ちてしまっている。
すると体はガス欠に近い状態になり、こんなサインが出やすくなります。
- 体が重だるく、手足に力が入りにくい
- 集中力が続かず、頭がぼんやりする
- 食後や休憩後に、強い眠気が出る
- 疲れがたまると、頭痛や目の奥の痛みが出る
- 週末にしっかり休んでも、疲れが抜けきらない
心当たりのある項目が多いほど、「脾虚タイプの疲れやすさ」かもしれない、というのが東洋医学的な見方です。
なぜ「日中」「休憩後」に強く出るのか
脾虚の方は、体を動かすためのエネルギーを継続的に作り出す力そのものが弱っているため、活動している時間帯に必要な分のエネルギーが供給しきれず、まるで息切れするように疲れが出やすいのです。
特に食後や休憩後は、消化のためにエネルギーが使われるため、もともと余力の少ない脾がさらに手薄になり、強い眠気として現れやすくなります。
今回の女性のように、単身赴任中のパートナーの代わりにお一人で育児と仕事を切り盛りしていた期間が長いと、気を作る力そのものがじわじわとすり減っていきます。
負担が軽くなった今も体が本調子に戻りきっていないのは、この「気を作る力の低下」がベースにあるためと考えられました。
糸練功で、「この方だけの脾虚」を見極める
糸練功とはどんなものか
当店では、カウンセリングに加えて「糸練功(しれんこう)」という技術を使い、体質や経絡の状態を詳しく確認しています。
糸練功とは、入江正先生が開発された入江式FT(フィンガーテスト)と、気功の考え方を組み合わせて生まれた、医療気功的な体質チェックの技術です。
指先の反応を通じて経絡の気の流れの乱れや、どの臓腑の働きが弱っているかを調べ、さらにその方の今の状態にどの漢方薬が、どのくらいの量で合うのかを見極めるために用います。
誤解のないようにお伝えすると、糸練功そのものは治療ではなく、あくまで東洋医学的な評価のための技術です。
西洋医学でいう問診や検査データの読み取りに近いものだと考えていただくと、イメージしやすいかもしれません。
「脾虚のお薬」にも、実はたくさんの選択肢がある
ここで知っておいていただきたいのが、「脾虚のお薬」とひとくちに言っても、実際には候補となる漢方薬が5〜10種類以上あるということです。同じ脾虚でも、
- 疲れ方が「気」の不足寄りなのか、「血」や「水」の巡りの滞りも絡んでいるのか
- 精神的なストレスの影響がどのくらい強いか
- 睡眠の質やリズムがどんなふうに乱れているか
といった要素の組み合わせによって、体質に合う処方はまったく違ってきます。
ですので今回も、脾虚を中心に見立てながら、他のバランス(気・血・水の巡りや、他の臓腑の状態)も含めて、糸練功でひとつずつ丁寧に確認していきました。
補中益気湯だけでなく、その方に合う脾虚の漢方を選ぶ理由
補中益気湯は、とても頼りになるお薬です
この方はすでに病院で補中益気湯を処方されており、服用して少し楽になった実感もお持ちでした。
補中益気湯は、胃腸の働きが弱って栄養をうまくエネルギーに変えられず、疲れやすい・体がだるい・日中眠くなるといった症状に用いられる、脾虚・気虚に対する代表的な処方のひとつです。
体力が低下気味の方に広く使われており、「疲れやすさの漢方薬」としてよく知られています。
さらに一歩踏み込んで見えてきたこと
ただ、糸練功で改めて詳しく確認したところ、この方の今の状態には、補中益気湯よりも別の脾虚に対する処方のほうが、より体質にぴったりと反応することがわかりました。
これは、補中益気湯が「合わない」という意味ではありません。
あくまで「同じ脾虚の中でも、この方の今の体質には、さらに合う処方があった」ということです。
実際、この方も補中益気湯で一定の改善は感じていらっしゃいました。
ただ、育児と仕事の両立という長期間の負担のかかり方、気を作る力の低下の度合い、精神的な緊張の抜け方など、細部まで見ていくと、もう一段階その方にフィットする処方が見つかることがあります。
今回はまさにそのケースでした。
漢方服用から3ヶ月で変わった、だるさと日中の眠気の経過
漢方薬を切り替えてから、経過はこんなふうに進んでいきました。
服用を始めてから最初の数週間は、大きな変化はまだ実感しにくい時期でした。
ですが1〜2ヶ月ほど経過したころから、「体の重だるさが少しずつ取れてきた」という声が聞かれるようになりました。
それまでは週末にしっかり休んでも抜けきらなかった疲れが、平日の中でも少しずつ軽くなっていく感覚があったそうです。
あわせて、日中の眠気や集中しにくさも徐々に和らいでいきました。
休憩後にどっと襲ってきていた眠気が、以前ほど強く出なくなり、仕事にも育児にも、以前より落ち着いて向き合えるようになったとのことでした。
現在は服用開始からおよそ3ヶ月が経過し、症状も安定してきたため、少しずつ量を減らしていく減薬の段階に入っています。
体質は季節や生活の変化によっても揺れ動くものですので、今後も必要に応じて微調整をしながら、じっくりと様子を見ていく予定です。
「脾虚タイプかも」と感じたときに試したいセルフチェックと相談のすすめ
健康診断でも生理周期でも「異常なし」と言われているのに、体は重だるく、日中の眠気や集中力の続かなさに悩んでいる。
そんな方は、実は少なくありません。
西洋医学の検査では拾いきれない、東洋医学的な「脾虚」や「気虚」が背景に隠れていることがあります。
もし今回のお話に、ご自身の毎日と重なる部分があったなら、まずは「もしかしたら私は、脾虚タイプの疲れやすさなのかもしれない」と、ふと立ち止まって考えてみることから始めてみてください。
それだけでも、体との向き合い方は少し変わってくるはずです。
ただ、今回の症例が示すように、「脾虚のお薬」といっても実際には多くの選択肢があり、体質を丁寧に見極めないと、せっかく漢方薬を試してもぴったり合わないことがあります。
ドラッグストアなどで見た目や口コミだけで選んでしまう前に、一度きちんと体質を見てもらうことには、それだけの価値があると私たちは考えています。
当店では、カウンセリングと糸練功を組み合わせて、お一人お一人の体質や経絡の状態を丁寧に確認し、数ある処方の中から今の状態に本当に合うものを、一緒に探していきます。
「病院のお薬で少し楽になったけれど、もう一歩何かが足りない」と感じている方は、どうぞ気負わず、一度お話を聞かせてください。
