「去年までは、ほぼ4週間の周期で来ていたんです」
そう話してくださったのは、30代の女性患者様でした。
今年に入り仕事が変わってから、月経の周期が少しずつ乱れ始めたといいます。
ひどい時には、2ヶ月近く月経が来ないこともあったそうです。
もともとストレスの影響を受けやすい方で、気持ちが落ち込みやすい傾向もありました。
ストレスがかかると食欲が落ち、下痢をしやすく、お腹の張りも出やすいとのことでした。
ストレスで食欲が落ち、生理が遅れる——この2つは無関係ではありません。
症例のご紹介
初回の相談時の様子を整理すると、次のような特徴が見られました。
PMSとして軽い落ち込みがあり、冷えの自覚はないものの、一時期は体温が35度台まで下がっていました。
経血の量や色には大きな問題はなく、ここは比較的安定していました。
舌を拝見すると、湿り気が多く歯痕がある状態で、体内に余分な水分が滞りやすい傾向がうかがえました。
舌の裏側の静脈にも怒張が見られ、血の巡りの滞りも示唆されていました。
こうした所見を総合すると、東洋医学でいう「太陰の虚証」、つまり脾(胃腸)の働きが弱った状態と考えられました。
このあたりの体質の見極めには、当薬局では糸練功という気功的な体質分析法を用いています。
ストレスで生理が遅れるのはなぜ?東洋医学でみる月経不順
東洋医学では、月経は子宮だけの働きではなく、全身の気・血・水の巡りが整って初めて規則正しく訪れると考えます。
ストレスは、この中でも特に「気」の巡りを滞らせやすい要因のひとつです。
気の滞りは「気滞」と呼ばれ、イライラや落ち込み、お腹の張りとして現れることがよくあります。
今回の患者様が仕事の変化をきっかけに体調を崩されたのも、この気滞が引き金になったと考えられます。
胃腸が弱いと生理が遅れる?脾虚と月経不順の関係
東洋医学で「脾」と呼ばれる胃腸の働きは、食べたものから気や血を作り出す土台にあたります。
ストレスで食欲不振や下痢が続くと、この土台そのものが弱ってしまいます。
気や血が十分に作られなければ、月経を規則正しく起こすための材料も不足してしまいます。
今回のケースで見られた脾虚(胃腸の慢性的な弱り)は、月経不順の根本的な背景だったと考えられます。
脾虚・水滞・気滞・瘀血、四つの乱れの関係
脾が弱ると水分代謝もうまくいかなくなり、「水滞(水毒)」が生じやすくなります。
舌に見られた歯痕は、まさにこの水滞のサインでした。
さらに気の滞りが長引くと、血の巡りにも影響し「瘀血」という状態を招くことがあります。
舌下静脈の怒張は、この瘀血の存在を示していました。
脾虚・水滞・気滞・瘀血は、それぞれ独立した問題ではなく、互いに影響し合いながら悪循環を作っていきます。
どこか一点だけを整えても改善しにくいのは、このためです。
冷えを感じないのに、内臓は冷えていることがある
今回の患者様は「冷えの自覚はない」とおっしゃっていましたが、一時期は体温が35度台まで低下していました。
これは、自覚症状と体の実態が必ずしも一致しないことを示す例のひとつです。
体表は温かく感じても、内臓、特に胃腸周りが冷えているケースは珍しくありません。
この隠れた冷えを見極めることも、体質判断における大切な視点です。
生理不順やPMSに対する当薬局の考え方は、こちらのページでも詳しくご紹介しています。
生理不順・PMSの漢方相談について
頸椎のこわばりと自律神経、ホルモンの静かな関係
治療の途中、頸椎まわりの緊張が強いことに気づき、バレ・リュー症候群の考え方を参考に体質を調整しました。
頸椎の緊張は自律神経の働きに影響し、間接的にホルモンバランスにも関わることがあります。
婦人科の症状というと骨盤まわりに意識が向きがちですが、体は全身でつながっています。
一見関係のなさそうな部位の緊張が、実は月経不順の一因になっていることもあるのです。
女性ホルモンだけを追わない、という選択
月経不順というと、女性ホルモンの検査や調整が中心になることが多いかもしれません。
しかし東洋医学では、胃腸の状態、気の巡り、血の巡り、自律神経など、全身のバランスから月経を捉えます。
今回のケースも、女性ホルモンそのものを直接調整したわけではありません。
全身の土台を整えていった結果として、月経が規則正しく戻っていきました。
生理不順が漢方で整うまで:服用2〜3ヶ月で見えた変化
漢方の服用を始めてから、まず変化が出てきたのは月経のリズムでした。
それまで2ヶ月近く来ないこともあった生理が、服用から2〜3ヶ月ほどで、おおむね毎月訪れるようになりました。
もちろん、仕事の忙しさやストレスによって多少の揺らぎはありましたが、以前のように「次の生理がいつ来るのか分からない」という不安定さは徐々に落ち着いていきました。
患者様ご自身も、「体が少しずつ軌道に乗ってきた感じがする」とお話しされていたのが印象的でした。
生理の周期が整うということは、単にカレンダー上の数字が揃うだけではありません。
胃腸の働きや気分の波、体温の変化など、全身のリズムが連動して安定してきた結果ともいえます。
生理不順とメンタルの波に合わせて、漢方を少しずつ調整した理由
最初の取り組みとしては、水滞と気滞を中心に整えるための薬方を用いました。
ストレスとして掛かっている負荷に、まず対応する狙いでした。
その後、頸椎まわりの反応を踏まえて薬方を調整いたしました。
体の深部を整え、自律神経への働きかけを強める意図です。
最終的には、全身の疲弊、つまり脾虚そのものに対応するための薬方へと移行しました。
これらの複合的な取り組みで、生理不順だけではなくメンタル面を含めたトータル的な体質改善をおこなうことができました。
体質は一つの処方で完結するものではなく、その時々の状態に合わせて処方を変えていく必要があります。
これは、体質を継続的に見極める糸練功があってこそ可能になる調整です。
四年をかけて、彼女が取り戻したもの
その後も、仕事のストレスによる波は時折ありましたが、以前のような大きな乱れは見られなくなりました。
約4年間の通院を経て、患者様は治療を卒業されました。
今では、忙しい時期でも月経の周期を大きく崩すことなく、自分の体のリズムを信頼しながら仕事に向き合えるようになっています。
生理不順・ストレス・胃腸の不調でお悩みの方へ
生理不順とストレス、胃腸の不調は、別々の悩みに見えて、実は体の中でつながっていることがあります。
婦人科で検査をしても大きな異常が見つからず、モヤモヤした気持ちを抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
そうした場合、女性ホルモンだけでなく、胃腸や自律神経、全身の巡りといった視点から体を見直すことで、改善の糸口が見つかることがあります。
どこに相談しても改善しなかった経緯でも、遠慮なくお聞かせください。
まずはLINEで、今の症状を簡単に教えていただくだけで大丈夫です。
