原因不明の不調が増えていく。自律神経と漢方で回復していった50代女性の症例

50代前後になってから、『自律神経のせいかも』と言われつつ、はっきりした原因がわからない不調が増えてきた…そんな方に向けたお話です。

「原因がわからないのに、また新しい症状が出てきた」

そのつらさは、病院の検査では数値に出てきません。
「異常なし」と言われるたびに、ますます不安になる。
そして、体はどんどん悲鳴を上げている。
そんな経験をされている方が、実はとても多くいらっしゃいます。

今回ご紹介するのは、そんな「多彩な不調」に長く悩まれていた50代女性のご相談です。
漢方と氣功による体質分析を通じて、1年かけてゆっくりと、でも確実に回復されていかれた経過をお伝えします。

「自律神経かな」と思いながら、ひとりで抱えていた

ご相談にいらした50代の女性は、「自分でも自律神経が乱れているんだと思うんです」とおっしゃっていました。
すでに病院で安定剤を処方されており、飲んでいない日よりはましだけれど、完全に楽にはなれない。そんな状態が続いていたそうです。

「最初はパニック発作だけだったんですが、だんだんいろんな症状が増えてきて……」

そのひとことが、長い経緯を物語っていました。

ひとつではなく、重なることで日常が壊れていく

この方の症状を整理すると、非常に多岐にわたっていました。
不安感・焦燥感、パニック発作、睡眠障害、突然の大量の汗、イライラ感、動悸、肩こり・全身の痛み、そして全身に力が入らない感覚。
こうして並べると、どれも「よくある症状」に見えるかもしれません。

ただ、問題はその「重なり」にありました。
朝起きると体が鉛のように重く、動悸がしているから横になれない。
ようやく眠れたと思ったら夜中に汗びっしょりで目が覚める。
外出先でふとしたきっかけにパニックが来るのが怖くて、予定を入れるのが不安になってくる。
ひとつひとつは小さくても、重なることで「普通の日常」がどんどん遠くなっていく、そのしんどさを、この方はずっとひとりで抱えておられたのです。

糸練功(しれんこう)で、体の内側を読み解く

当薬局では、問診とあわせて糸練功(しれんこう)という氣功に基づく体質分析法を取り入れています。
これは、体の表面に現れる微細な反応を手の感覚で読み取ることで、内側にある体質の偏りを確認していく方法です。
西洋医学の検査ではとらえにくい「気のめぐり」や「臓腑のバランス」を判断するのに適しています。

この方に糸練功を行ってみると、自律神経系に関連する反応が3箇所に現れていることがわかりました。
複数の箇所に反応が出ているということは、体質的な偏りがひとつではなく、いくつかの問題が重なって症状を引き起こしている状態を示しています。

具体的には、次のような体質の偏りが確認できました。

まず「気滞(きたい)」です。
気のめぐりが滞っている状態で、不安感やイライラ、のどの詰まり感などに関わります。
次に「気の上昇」です。
上気と言われる気がのぼせてしまっているため、精神・感情・睡眠を司る機能が不安定になっている状態です。
動悸や不眠、不安感が強くなるのはこの影響と考えられます。
そして「気虚(ききょ)」です。
慢性的なエネルギー不足のことで、全身の力が入らない感覚や疲れやすさの根っこにあります。

これらが複合的に絡み合っていたことが、症状の多さと複雑さにつながっていたのです。

何を、どの順番で整えるか。漢方の組み立て方

体質の偏りが複数ある場合、漢方薬もひとつではなく、複数の処方を組み合わせて対応していきます。

この方には、大きく3つの方向性で処方を考えました。
気の滞りを整えて不安感や焦燥感を和らげること。
上気を落ち着かせて睡眠と動悸を安定させること。
そして底をついているエネルギーを補い、体全体の回復力を底上げすること。

重要なのは「順番」です。
エネルギーが極度に低下しているところにむやみに気を動かす薬を使っても、空回りして疲れが増すことがあります。
そのため、体の状態を見ながら、補うことと整えることのバランスを少しずつ調整していくのが煎じ薬の強みでもあります。

当薬局では煎じ薬(せんじぐすり)(生薬を自宅で煮出して飲む伝統的な形の漢方)を処方することが多くあります。
エキス剤(顆粒)と比べて生薬の組み合わせや量を細かく調整できるため、このような複合的な体質に対してより柔軟に対応しやすいのです。

1ヶ月後。「服用前とは比べものにならない」

服用開始から1ヶ月が経ち、再び来局されたとき、最初に気づいたのは表情の変化でした。
初回は眉間に力が入っていたような緊張感があったのですが、このときはふっと表情がほどけていて、話し方にも余裕が生まれていました。

「服用前とは比べものにならないほど楽です」とおっしゃっていただきました。
パニック発作の頻度がはっきり減り、夜中に汗で目が覚める回数も少なくなった。
朝の「体が重い感覚」がやわらいで、午前中から動けるようになってきた、とのことでした。

1ヶ月でここまで変化が出るのは、糸練功による体質把握が的確だったこと、そして処方の方向性が合っていたからだと考えています。

2ヶ月後。体の内側からバランスが整ってきた

さらに1ヶ月が経った頃には、「外から強いストレスを受けなければ、ほとんど気になる症状は出ない」という状態になっていました。

これは非常に大切な変化です。
最初は何もなくても症状が出ていたのに、「原因があれば揺れるけれど、何もなければ安定している」という段階に移ってきた。
これは体の土台が少しずつ整ってきている証拠です。

この頃から、「漢方を続けていれば、もっとよくなれるかもしれない」という前向きな実感を持っていただけるようになっていきました。

波はあっても、全体として回復の方向へ

2ヶ月以降も、体調が一本調子で上がり続けるわけではありませんでした。
季節の変わり目に少し揺れることがあったり、仕事の繁忙期にイライラが戻ってきたりすることもありました。

ただ、そのたびに処方を微調整しながら対応していくことで、戻り方が以前より浅くなっていくのをご本人も感じていただけていたようです。
「以前だったらここでパニックが来ていたのに、今回は大丈夫だった」という言葉が印象的でした。

体の回復は、直線ではなく波を描きながら進んでいきます。
でもその波が、月を追うごとに小さくなっていく。それが漢方による体質改善の自然なかたちです。

1年後。「まったく不調を感じない」という日常へ

治療を始めてちょうど1年が経った頃、この方は「最近、自分が漢方を飲んでいることを忘れそうになるくらい、普通になってきました」とおっしゃいました。
不安感もパニック発作も、ほとんど感じなくなっていた。
夜はしっかり眠れて、朝に体が重くない。外出することへの恐怖感もなくなっていた。

この方が取り戻した日常は、症状がないというだけでなく、「次に何があるか怖い」という心の緊張からも解放された日常でした。
大切な人と気兼ねなく出かけられる。そういう当たり前のことが、少しずつ戻ってきたとのことでした。

最後に、これからの季節の養生と食事のポイントをお伝えして、漢方治療は終了となりました。
特に、気を補うための食材(山芋・もち米など)を日常に取り入れること、寝る前に心を静める時間をつくること、冷えと過労を重ねないようにすることをお伝えしました。

「またもし大きなストレスが続いたり、症状が出てきたりしたら、早めに声をかけてくださいね」
そんな言葉を添えて、お見送りしました。

なぜ自律神経の不調に、漢方が向いているのか

東洋医学では、メンタル・精神・自律神経といった「目に見えないバランス」の調整こそが、治療の中心のひとつと考えられています。

「気のめぐり」「心の安定」「臓腑のエネルギー」

これらは、血液検査やMRIでは数値に出てきません。だからこそ、「検査では異常なし」と言われてしまう。

でも、「異常なし」は「何も起きていない」ではありません。
数値に出ないところで、体のバランスは確実に崩れている
そのアンバランスを読み取り、整えることに、漢方はとても相性がよいのです。

特に今回のような「複数の症状が重なっている」ケースでは、それぞれの症状に個別に対処するのではなく、根っこにある体質の偏りを整えることで、全体が落ち着いていくというアプローチが有効です。
これは西洋医学が苦手とするところであり、漢方が長年積み重ねてきた知恵でもあります。

「こんなことで相談していいのかな」と思っている方へ

「何が原因かわからない」「これは漢方で相談できる内容なのかな」

そんな風に迷っている方に、ぜひ伝えたいことがあります。

原因がわからないまま不調だけが重なっている状態は、むしろ漢方が最も得意とするところのひとつです。
問診でお話をうかがい、糸練功で体の反応をみていくと、言葉にしにくかった不調の根っこが、体質の偏りとして見えてくることが多くあります。
「そういうことだったのか」とご自身の体への理解が深まるだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。

相談はLINEからでも大丈夫です。
「最近こういう症状が続いていて……」と、症状をざっくり教えていただくだけで構いません。
どこに行っても改善しなかった経緯があっても、遠慮なくお声がけください。

あなたの心と体のバランス、一緒に整えていきましょう。

パニック障害の漢方治療について、詳しくはこちらをご覧ください。

この記事の著者・監修

漢方薬・紫雲 代表薬剤師 Kampo Shiun

  • 薬剤師(国家資格)
  • 漢方専門歴 20年以上
  • 気功実践歴 20年以上
  • 開局15年(2010年〜)
  • 漢方薬・紫雲 代表
  • 全国オンライン対応

神奈川県湘南エリアで漢方薬局「漢方薬・紫雲」を開局。 薬剤師として西洋薬の知識を持ちながら、20年以上にわたり漢方・気功の専門家として 多くの患者さまの体質改善に携わってきました。 「どこに行っても改善しなかった」「病院で異常なし、でもつらい」という方のご相談を 特に大切にしています。煎じ薬・氣功チェックを組み合わせた、紫雲ならではのアプローチで根本からの体質改善を目指します。

※ 本記事は薬剤師・漢方専門家の監修のもと作成しています。個別の症状についてはご相談ください。