Bさん(40代・女性)には、20代のころから「特定の場面で急に息苦しくなる」という経験がありました。
満員電車の中、歯科医院の治療台の上、エステで顔にタオルをかけられた瞬間。
そういった「逃げられない」と感じる場面で、突然胸が締め付けられるような感覚と動悸が来る、ということが断続的に続いていたといいます。
30代になってからはそうした症状が落ち着き、気にならない時期が長く続きました。
ところが、コロナウィルス関連のニュースが続き、生活リズムが大きく変化した頃から、以前と似た症状がまた顔を出すようになってきました。
「また始まった」という感覚とともに、「今度は以前より症状が強く、頻度も多い気がする」。
そう感じるようになってきたのが、今回の相談のきっかけでした。
日常の中で一番困っていたのは、通勤の時間帯でした。
電車に乗っていると胸がもやもやして、息の吸い方がわからなくなるような感覚が来る。
歯科の定期健診も以前から気が重かったけれど、最近はなかなか予約を入れる気になれない。
美容院でケープをかけられたときも、以前より落ち着かない気持ちが強くなっていました。
「日常のひとつひとつが、じわじわと面倒になっていく」というのが、Bさんの感覚でした。
主な症状と、心療内科での対応
Bさんの主な症状を整理すると、息苦しさ・動悸・胸のもやもや感・吐き気・不安感と焦り・入眠困難と浅い眠りと、複数の症状が重なり合っていました。
心療内科を受診して抗不安薬を処方してもらったことがあり、症状が強い時期は服用することで少し楽になれた時期もあったといいます。
ただ「薬を飲んでいる間はなんとかなるけれど、根本は変わっていない気がして」という感覚が続いていました。
「症状が出るたびに薬で抑えるのではなく、こういう症状が出やすいからだの状態そのものを変えていきたい」
そう思うようになったことが、漢方相談に来られた理由でした。
漢方相談で見えた「気が上に昇りやすい体質」と「気の滞り」
問診と気功から見えた体質の傾向
初回の相談では、睡眠の質・胃腸の状態・冷えの有無・疲れやすさ・日々のストレスの種類・性格の傾向まで、時間をかけて聞き取りました。
Bさんは「心配性で、ひとつ気になり出すとなかなか切り替えられないタイプ」と話してくれました。
仕事も家事もきちんとこなさなければという意識が強く、自分でも「がんばりすぎているのはわかっている」とおっしゃっていました。
聞き取りと並行して、糸練功(しれんこう)という気功由来の体質確認の技法を用いて体の状態を確かめました。
Bさんの場合、ふたつの傾向が確認されました。
ひとつは、気が上に昇りやすい状態です。
頭や胸がざわざわしやすく、のぼせやすい、また、息苦しさや動悸、不安感が「頭と胸に集まりやすい」体質の傾向と考えられます。
もうひとつは、気の流れが滞りがちな状態です。
胸のつかえやため息の多さ、気持ちの切り替えが難しいなど、「頭ではわかっているのに、気持ちがついてこない」という感覚の背景にあるものです。
3種類の漢方で気の巡りと土台を支える方針に
確認できた体質の傾向をもとに、漢方薬を組み合わせることにしました。
ひとつめは、気の巡りを整えることを主な役割とする粉薬。
上に昇りすぎている気を落ち着かせ、滞りを解きほぐすことを中心に据えた薬方です。
ふたつめは、からだの土台(体力と血の巡り)を補うサポートの粉薬。
みっつめは、症状の強い場面を補助的に支える粒剤です(具体的な処方名は体質によって異なるため、ここでは割愛します)。
「まずは3〜4か月を目安に、日常生活での不安の出方や眠りの変化を一緒に見ていきましょう」
そう伝えると、Bさんは「1年か2年かはわからないけれど、焦らずやってみます」と話してくださいました。
4か月、7か月、9か月——少しずつ不安がしぼんでいった経過
数週〜4か月目|不安感と胸のモヤモヤが軽くなり、補助薬を半量に
服用から数週間が経った頃、Bさんから「常に胸がザワザワしていた感じが、少し和らいできた気がします」という言葉が出てきました。
劇的な変化というよりも、「以前はずっとあったざわざわが、ない時間が少しずつ増えてきた」という感覚だったといいます。
眠りについても、入眠まで長くかかっていたのが少し短くなり、夜中に目が覚める回数も減ってきたとのことでした。
4か月ほど経った時点で、補助の粒剤を半量に減らしました。
からだが少しずつ変化に対応できるようになってきたサインと捉えています。
7か月目|日常の不安が出にくくなり、サポート薬を卒業
7か月後には、仕事や家事など普通の日常の中で「強い不安」が来る場面がはっきり減っていました。
「以前なら絶対に不安になっていた場面でも、『まあ大丈夫かな』と思える瞬間が増えてきた」とBさんは話してくれました。
電車に乗っても、胸のもやもやが「気になるかな」程度で収まることが増えてきたとのことでした。
糸練功での確認でも、気の上昇・滞りの反応が落ち着いてきていたため、このタイミングでサポートの粉薬を卒業しました。
9か月目|すべての漢方薬を卒業し、穏やかな日常へ
9か月が経つ頃には、「また発作が来るかもしれない」という予期不安が、以前ほど頭の中を占めなくなっていました。
「前は出かける前に、いろいろ考えすぎてしまっていたのが、最近はそこまで考えなくなってきた」という言葉が印象に残っています。
気功での確認でも状態が安定していたため、残っていた主力の漢方薬も含め、すべて卒業となりました。
その後も再発なく、穏やかな日々を過ごされているとのことです。
この症例が教えてくれる「早めの体質ケア」の大切さ
パニック症状は、「また起きるかもしれない」という予期不安が長く続くほど、緊張とからだの疲弊が重なり、悪循環に入りやすくなります。
Bさんの場合、症状が強くなってきた段階で比較的早めに相談を始め、体質ケアをスタートできたことが、9か月というスムーズな経過につながったと考えられます。
もちろん、経過や必要な期間には個人差があります。
同じような症状でも、体質の傾向・生活環境・これまでの経緯によって、かかる時間はそれぞれです。
「9か月で必ずこうなる」とお伝えできるものではありませんが、こうした一例もある、ということをお伝えしたいと思います。
「病院での治療を続けながら、からだの土台からも整えておきたい」と感じたタイミングで、漢方相談を選択肢のひとつとして考えていただくことも、ひとつの道です。
よくある質問:パニック症状と漢方相談について
パニック障害に漢方は役立ちますか?
漢方医学では、不安や動悸・息苦しさといったパニック症状を「気の乱れや偏り」として捉えます。
「効く・効かない」を断定することはできませんが、気の流れや偏りを整えることで、回復の土台を支えるという考え方のもとで薬方を組んでいます。
心療内科・精神科での薬物療法と並行して相談に来られる方も多く、主治医での治療を続けながら、体質面から支えていくスタンスで関わっています。
どのくらいの期間で変化が出ますか?
経過や必要な期間には、個人差が非常に大きくあります。
今回のように9か月で安定するケースもあれば、体質や生活環境によってはもっと長い時間が必要な方もいます。
「何か月で必ずこうなる」とお伝えできるものではありません。
大切にしていることは、焦らず、体質の変化に合わせて少しずつ調整を続けていくことです。
「早く治さなければ」という焦りそのものが気の乱れを大きくすることもあります。
一緒にゆっくりと確認しながら進んでいけたらと思っています。
LINEで症状を簡単に教えていただくだけで大丈夫です。
どこに行っても変化がなかった経緯があっても、遠慮なくご連絡ください。
